2月末から加入期間10年以上の対象者に順次年金裁定請求書が送付
公的年金の老齢年金を受け取るための最低限必要な期間を「受給資格期間」という言い方をしますが、これまでは保険料を納付した期間(納付済期間)や保険料を免除された期間(免除期間)、年金の金額には反映されない期間(合算対象期間)を併せて25年が必要とされていました。この受給資格期間には、厚生年金保険、国民年金、共済組合(国家公務員や地方公務員として共済組合に加入していた人:平成27年10月1日から厚生年金保険に統一されています)の加入期間が含まれます。
私が金融機関に勤めていた時代に、25年というハードルがクリアできずに年金がもらえないという理由で諦めていた方が結構いらっしゃいました。特に自分で商売をされている個人事業主の方は、会社員と違って退職金もなく、「働かなければ収入がなくなってしまうので働いているけど、自分がいつまで働けるだろうか?」と不安に思っていらっしゃいました。
今回の送付対象者は64万人とも言われ、当初、受給資格期間の短縮は消費税率10%になる日が施行予定日とされていました。これが消費税率の見直し延期により前倒しで実施され、平成29年8月施行に向けて、生年月日ごとに8月末ころから順次年金請求書が送付されることとなりました。
今回年金の請求書が送付される方は、日本年金機構が保有する年金掛け込み期間が10年以上の方々であり、今回送付されていない10年未満の方でも「合算対象期間」や「加入記録に漏れ」があったりした方、また、「任意加入」や「後納制度」などを利用することで、あらたに年金受給資格を満たすことができる可能性もあります。国民年金の場合、10年間の納付では月額約16,252円(年額約195,023円)程度と少ないと感じられるかもしれませんが、公的年金は終身、つまり、生きている限りはずっと受給できるという強みもあります。民間保険会社の個人年金のように保証期間がないため年金が受給できるようになってから短い期間で残念ながら亡くなってしまうと、もらえる金額がトータルでは少なくなってしまうというデメリットもありますが、平均的な年齢まで生きていればたいへん有利な制度となっております。(宣伝になってしまいますが、年金制度や健康保険制度のプロである社会保険労務士に相談することで、現在の公的制度の理解を深め、家計の支出の見直しや将来の貯蓄に対する設計の見直しの参考になることもたくさんあります。)
もらえないと諦めていた方でも、65歳や70歳までは年金を掛け込むことができる「任意加入制度」や、複雑な年金額には反映されない「合算対象期間」を調べることでもらえるようになる可能性もあります。「もらえるようにするためにはどうすればいいか」を年金事務所や社会保険労務士に今一度相談してみてはいかがでしょうか。