法人は代表者一人でも健康保険、厚生年金保険に加入

適用事業所として法人事業所は新規適用の手続きをしなければなりません

意外と相談が多いのですが、法人の事業所は代表者一人でも健康保険・厚生年金保険の適用事業所となり、加入の手続きをしなければならないということを知らずに相談される方が多いのが現状です。「従業員3名だから手続きしていなかった」「社長一人の会社で、加入しなければいけないということを知らなかった」という相談を受けたことがありました。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は5人以上事業所および法人事業所は強制適用

  • 常時5人以上の従業員を使用している適用業種の個人事業所
  • 常時1人以上の従業員を使用している国、地方公共団体、または、法人の事業所

 

はすべて健康保険・厚生年金保険に加入しなければなりません。個人事業所の中で、農林・水産・畜産業、接客娯楽業、法務業、宗務業は非適用業種として社会保険に加入することは強制されていませんが、任意で加入する道がつくられています(任意適用)。しかし、社会保険では代表者1人でも「法人に使用している人」として扱われるため被保険者の資格を取得します。労災保険や雇用保険は代表者を労働者として取り扱いませんが、社会保険の場合は加入する必要があるということになります。役員報酬が「0円」等無報酬の場合、個別に年金事務所で相談して加入必要の有無を確認したほうがいいでしょう。

相談を受けた中に労働者側の相談として解雇に伴う相談が多くあります。解雇した会社が、法人にもかかわらず「雇用保険に加入していない」「厚生年金に加入していない」という内容で、加入していないので「失業保険がない」「厚生年金がないので老後の年金が少ない」ということになってしまいます。解雇されたこと自体に不満を持っていることに加え、退職後になんの保障もないということで、トラブルがさらに大きくなってしまいます。時間外手当の未払だけではなく将来の保障も含めて裁判で訴えたいという相談もあり、会社としての訴訟リスクはかなり大きいものとなってしまします。

現実問題としては、健康保険・厚生年金保険・雇用保険ともに保険料の時効が2年ということもあり、未加入の事業所の場合は原則2年遡って加入するということになります。しかし、過去の労働者の社会保険料控除の金額が変わってしまい所得税や住民税の金額にも影響が出ること、また、労働者負担分の保険料を遡って徴収する方法等、税務署や市役所、年金事務所やハローワーク等に相談して対処するため複雑なやり取りが予想されます。労働者とトラブルになる前に今からでも加入できるのか等を含めて、早めに相談することをお勧めします。

相談を受けた会社社長の意見として、「労働者に関する手続きが複雑すぎて、何をいつしたらいいのかわからない」「パンフレットをみても何を言っているのかわからない」と実感のこもったものがありました。定期的に毎年する手続きや、社会保険料・労働保険料の変更の時期や変更方法等複雑で社長一人では対応できないという悩みもあります。もちろん、売上増加や商売上の判断等の悩みもあり、経営者への負担は大きいものです。

各社会保険労務士事務所は、顧問報酬による契約だけではなく、様々な相談内容に対応できるようにスポットの契約や相談業務による対応等様々なプランを用意しています。得意とする分野のコンサルティングを行う事務所も多数あります。本業に専念するためにも、専門家への相談は事業規模にかかわらず必要と考えられます。顧問ではなくても相談しやすい社労士事務所を見つけることをお勧めします。